作品とカメルーンの部族にまつわる伝説

バルトロメイ・トグオの作品には背景にカメル―ンの部族にまつわる伝説など様々な様相が見え隠れしています。近作Partageからよみとる世界の紹介。

PartageVII / 2020 / ink on canvas / 200 x 200 cm

■ バルトロメイ・トグオ:Partagesより

今年は、アフリカ(エジプト)出身の詩人で作家のエドモン・ジャベスの死後30周年に当たります。彼の作品は私たちに刺激を与え続けています。エドモン・ジャベスはその問題提起と作風によって私の世界観と近く、彼の作品は私の作家としての実践とも共鳴していると感じています。彼の著作を読んだとき、思考の類似性を感じました。エドモン・ジャベスの世界、特に彼の「Livre du Partage」(分割―分かちあいーの本)について学ぶことが釜山ビエンナーレ2020に出展した作品のインスピレーションを与え、そこに出展されたPartages I – VIII という8枚の作品になりました。

今年、2021年の9月にGalerie Lelong & Co. で行われる個展は釜山で始まったことの継続となり、2020年から2021年にかけて制作された青い絵画が展示されます。そしてまったく新しいインタラクティブなインスタレーションを実施しようと思います。それは一般の人々に材料を寄付してもらったり、手紙や電子メッセージを送ってもらったりするものになると思います。

Barthélémy Toguo, 2021

バルトロメイ・トグオは、分割(共有)のアイデアを中心に、作家のエドモン・ジャベスとバミレケの人々をアフリカの起源、大量虐殺、放浪、亡命などのテーマで結び付けています。バミレケ族の伝説では日が暮れると巨大な靴を履き、荷物を積んで土地を横断してゆく神が存在します。その神は共有、共通の価値観に反した人々へ対し怒り、罰として涙、悔しさ、悲惨さを与えます。バルトロメイ・トグオはこの伝説に強い影響を受けています。この伝説をベースに、ヒューマニストであるバルトロメイ・トグオは、耳を傾けること、許すこと、おもてなすこと、そして分かち合うという彼自身の価値観を重視しています。神の怒りは反対に寛大さの原動力でもあり、ある意味再編集されたバミレケの伝説をもとにした精神こそが世界をより良い運命に導くであろうと、夜にやってくる怒りの神の放浪とは異なる方法で、あらゆる種類の富を分配しする平和的な活動をトグオは実践しています。

From press release for the exhibition Barthélémy Toguo: Partages at Galerie Lelong & Co. , Paris: exhibition Sept. 9 - Oct. 23

©Barthélémy Toguo / Courtesy Galerie Lelong & Co. & Bandjoun Station

注釈:

エドモン・ジャベス (Edmond Jabès 1912-1991) 詩人。1957年にナセルが政権をとったことから、エジプトを去り、フランスに移住。人間は本質的には流謫の民であり、居場所を持たないものであるということがその思想の根幹にあり、は砂漠、書物、ノマド、砂、ユダヤ人、空虚、井戸などを存在、言語などの隠喩として好んで使った。

バミレケ族 カメル―ンには240もの民族集団があり、バミレケ族は西カメルーン高地の部族で小王国を形成する。人口200万人。